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こりくから

DIARY & WEBCLAPお礼

2024.05.03
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2009.09.07
動機

「意外に権力志向なんだね。」

それは、我愛羅の風影就任の話を聞いた時の私の率直な感想だった。それから「でもそれって、上の爺さん連中にいいように使われるってことじゃないの?」と続けた。

守鶴を宿した我愛羅が一般部隊に入って少し。上の連中の危惧もわからないわけでもなく、要は彼を籠の中に留めておきたいということなのだろう。

私の辛辣な言葉にも我愛羅は憤るでもなく、悲しむでもなくただ静かに聞いていた。

老成した感のある我愛羅だが、実際のとこはそうでもないと思う。どこを切り取って見ても体温すら感じさせない冷静さを持つけれど、器用なのとは違う気がする。その背に既に負った様々なものを思うと、これ以上そんなものは増やさなければいいと思わずにはいられない。

「向いてないと思う。里の為に、なんて我愛羅に出来ると思えない。」

酷い言葉だったと思う。

何故私はこんなことを言っているのだろう、と言いながら思った。
だって、所詮他人事。
私はそんなことにイチイチ首を突っ込む性質じゃない。

「オレは別に、里の為だけに風影になるわけじゃない。」

それまで黙っていた我愛羅はやはり静かに言った。

「オレは・・・オレの存在を証明する為に、風影になる。」
「存在の証明・・・?風影になるってことは何を犠牲にしても里の為に生きなくちゃならないんだよ!」
「それは忍である以上、お前とて同じ事だろう。」
「・・・!」

その重責はあまりに違うと思うけれど、それでも何ら変わりないと言い切る我愛羅をまじまじと見つめ返す。この少年は自分の望みのために、風影の座すら利用してやるというのだ。
思わず、口元が緩んでしまった。

「あ、あははっ。そっか。なら、いいんじゃない?」

彼の決意に私の同意なんて何の意味も持たないだろう。
けれど、笑った私を見て我愛羅の肩から力が抜けたのがわかった。

***********************************
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2009.08.29
憂慮


「誰・・・?」

窓辺に立っていたシズクは、振り返りもせずに言った。
その頭部に巻かれた包帯が振り返っても無駄だと物語っていた。

「・・・もしかして、我愛羅?」
「ああ・・・。」
「お見舞いに来てくれるとは思わなかった。」
「・・・見舞いに来たわけじゃない。」
「あれ?じゃあ、何?業務連絡か何か。」

僅かに首を傾げながらようやく振り返ったシズクは、そっと自らの髪を撫でた。
こちらの様子がわからず、手持ち無沙汰なのだろう。
女独特の、そんな仕草を見たのは初めてだった。

「怪我の具合は。」
「あんまり芳しくないんだよね。このままって可能性も半分くらいあるみたい。」
「・・・。」
「別に我愛羅が気にすること無いよ。私がヘマしただけなんだから。」
「・・・しかし。」

シズクは例外だったが、部隊内では未だ我愛羅を怖れ、怯える者も多い。
今回の事故はそんな者がしたミスをシズクがフォローしようとして起こったものだった。

「そんなのまで気にしてたら心臓いくつあっても足りないよ。私は平気。」

忍としてやっていけるかどうかの瀬戸際に平気なわけはないと思う。
けれどシズクはそんな心の内などまるで感じさせなかった。
にわかの一部下である自分になどそんなことを見せる必要もないということなのだろうが。

だが、窓枠に寄りかかったシズクの姿が、いつもと異なりあまりに小さい。

「ん~と、じゃあ・・・ちょっと付き合ってくれるかな。」
「・・・なんだ?」
「屋上に風浴びに行きたいんだけど、さっき一人で行こうとしたら怒られたの。」
「当たり前だ・・・。」

まるで見えているかのように戸口まで歩いてきたシズクが小さく手を伸ばす。
その手が自分の服の袖をそっと握ったのを確認して、我愛羅はゆっくりと歩き出した。


********************************

謝りに来たけど言えなかった我愛羅と、それを察してあげたヒロイン。
でもヒロインも流されてるな。
しかし、時系列がバラバラ。時期的には3→4→1→2の順です。今のところ。
2009.08.29
黎明

「本当はこんなの捨てていきたいところだけど、そうもいかないでしょ。
・・・で、我愛羅、出来る?」

あまりの劣勢に取り乱した中忍の男が地面に倒れている。
シズクは手刀を喰らわせた手をさすりながら、それを指差してオレに問うた。

「この男を含め、全員の撤退を完了させればいいんだな・・・。」
「そうそう。」
「・・・お前は。」
「私?私は任務を続行するよ。じゃ。」

言い放ったシズクはもう振り返りもせず、敵陣へと駆けて行った。

正直、その女が無事生還出来るかどうかは怪しいものだと思っていた。
結果はシズクは大きな怪我もなく任務を完遂させ、涼やかな顔で帰郷したわけだが。
あちこちに小さな傷を負っていた事を知っている。

後に、初めて組んだ任務で何故オレに退却の指揮をとらせたのか聞くと。

「私、目は確かなのよ。」

と、透き通るようなその瞳で答えた。


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任務中の我愛羅の行動をよく見ていて、任せられると踏んだヒロイン。
そしてその瞳にやられた我愛羅さん(笑)

2009.08.22
動揺


「とりあえず、もう少し忍としての腕を上げて出直してね。」

その場の空気に不釣合いな程爽やかに言い放たれた言葉。
相手の女は何やら愚にもつかない悪態をついて走り去ったが、最早シズクは何も聞いていなかった。これは、相当怒っている。

我愛羅は柱の陰から見て、そう思った。

「好きな気持ちにどうこう言うつもりは無いけど、このくらいの気配は察せないと・・・ねぇ、我愛羅サマ?」
「・・・。」
「立ち聞きなんて趣味が悪いよ。」
「・・・たまたま通りかかっただけだ。」

里でも一、ニをを争う上忍で、親しい仲となったこの女が動揺するところなど見たことが無い。
初めて出会った頃から。
けれど、シズクはふいに視線を俯かせた。
それは非常にに珍しいことだった。

「・・・どうした。」
「ん~、でも可愛い子だったなぁと思って。」
「そうか・・・?」
「私より我愛羅と年も近いし。」
「だから?」
「・・・いつかはそういう日がくる事も覚悟しないとかもなぁ、と思って。」

まるで大したことではないというように、シズクは言った。
実際、シズクにとって大したことではないのかもしれない。
尚も続けられようとしている言葉に、内心穏やかでないのは間違いなくオレだ。

「だって私なんて、”我愛羅”と出会ったのが皆より少し早かっただけじゃない?」

それは、オレにとってとても重要な事実だ。
他の誰よりも早く、オレの存在を認めた女。
それがシズクだった。

「そこに拘って悪いか。」

憮然として告げると、シズクは僅かに目を見開いた。

「悪くない。心底良かったと思っているよ。」

そして、先ほどの女に見せたのとは違う、柔らかい笑みを浮かべた。


******************
どうも「言わされた」感があるなぁ、我愛羅(笑)まあ、ヒロインも別に意地悪からだけで言ってるわけじゃないんだけれども。
2009.08.10
価値


「・・・お前はオレといて・・・楽しいのか?」

傍らにいた我愛羅が、ぼそりと口にした。

私はごろりと横になったまま、手配書を捲っていた手を止める。
暫く考えていると、その沈黙に耐えられなくなったのか、我愛羅が小さく息を吐いたのがわかった。そして

「もういい・・・。」

と言った。

口調から察するに、それなりに落胆したのだろうと思う。

我愛羅の立場からすると、一緒ふらふらと里で遊ぶのも憚られる。
会う時は大抵どちらかの部屋で、こんな風にそれぞれが勝手に書類を見たり本を読んだり。その行動を「楽しいか」と問われればそれは少し疑問が残るのだけれど。

「ねぇ、楽しいかどうかに、価値があるの?」

そう問えば、「ならば他に何がある?」と自嘲めいた声。

もう随分と一緒にいるようになっても我愛羅はどこか私を信じていない、いや、不安を捨てきれない。それは、甘い言葉一つ言えない、こんな私のせいなのかもしれないけれど。そんな私を選んだ我愛羅にだって、多少の責任はあるでしょう?

「私は我愛羅の傍にいると落ち着くよ。それじゃダメ?」

ごろりと横に一回転して、傍らの我愛羅の顔を見上げる。
そして、本人は少し気にしている広いそのおでこに、そっと自分の額を重ねた。

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どこぞで何か聞き及んだらしい我愛羅。
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